人間は人生の3分の1の時間を睡眠に費やす生物です。食事と同じぐらい重要なものです。睡眠の効果はどんな薬物でも補いきることはできません。心身に突然起こる不調はまず、「食う」か「寝る」の乱れの中に原因を探しましょう。天候や他人の中に原因を見つけてもそれを変えることはできませんが、食事と睡眠は、自分で改善できるからです。
世の中は陰陽のバランスでできています。日中の社会活動は「陽」、夕食や睡眠は「陰」の時間です。
月や太陽といった天体の中でリズムを合わせて生きるのが生物です。睡眠には「長さよりも入眠時間」が大切だということを忘れないでください。海の満ち引きのように人間の心身も月や太陽と同期しています。科学的にもホルモンやリンパ球が多く作られている「22時〜2時」の睡眠中に「陰」(血液やリンパ液などの津液)という若さの源のようなものがつくられます。この時間の睡眠が不足すると「陰虚」になり、更年期障害や血虚を招き、不眠・イライラ・過食・不妊症・ほてり・腰痛・坐骨神経痛・夜間尿・糖尿病などを招きます。不眠症を直すのには適切な入眠時間が最も重要です。
とはいえ、現代生活では、22時以降に帰宅することも少なくないでしょう。その場合は、夕食を摂らずに早く寝て、朝食をしっかり摂りましょう。リズムが作れない最初のうちは、軽い睡眠薬を少量用いることも悪くはありません。2週間ぐらい規則正しい生活を続ければ、ほとんどの場合睡眠薬は不要になります。
その一方で、「寝すぎ」も「気虚」になり、気力低下や頭痛などがおきるので、何事にもバランスが重要です。寝起きが悪く、夕方になると元気になる人は「水滞」です。30分の睡眠不足によって10時間以上の時間をだるさの中で過ごさなければならなくならないことを意識して、自分にとっての最適な睡眠リズムをつくるように心がけてください。
適切な睡眠時間というのは人それぞれ違いますが、睡眠サイクルは通常90分周期なので、6時間〜7.5時間、子供であれば9時間〜10.5時間ぐらいが一般的な適正時間です。現代生活での現実的な睡眠時間は成人であれば「23:00〜6:30」を推奨しています。
朝日をあびることも日光による覚醒、ホルモン分泌などが適正に行われ、心身のリズムが整います。日光を浴びる時間が少なくなると、骨が弱くなり、うつ病が悪化することも科学的に証明されています。
<睡眠前の時間の過ごし方>
・ 眠る2時間前には携帯やパソコンテレビなどの電源を切り、外界との接続を断ちましょう。
・ 運動不足の人は夕食前に30分程度の運動をしましょう。
・ 脳の陰性化をするためには、陰の象徴である月を見る。
・ 香りや音といった環境を調整し、静かな時間を楽しむ。
・ ヨーガや瞑想をする。
・ できれば部屋の中に朝日が当たるようにして寝る。
<快適な目覚めのための漢方>
「気虚」:41補中益気湯
「血虚」:23当帰芍薬散
「水滞」:117茵蔯五苓散
「陰虚」:107牛車腎気丸
「気血両虚」:137加味帰脾湯
「肝気鬱結」:12柴胡加竜骨牡蛎湯