抗がん剤や外科的手術

 がんという病は、自分の細胞の遺伝子が突然変異を起こして無限増殖をするようになってしまったものです。突然変異自体は進化に必要なもので、宇宙線などの放射能の影響もあり、健康な体であっても、1日に5000個程度の癌細胞が体内に生じるという報告もあります。健康であれば、免疫細胞が新たに発生した癌細胞を発見し破壊します。しかし、臨床上の画像検査、レントゲンやCTで癌として発見されるときは、すでにその免疫細胞の監視をすり抜けて大きくなってしまった段階です。つまり癌細胞の増殖が、自分の免疫システムの能力を超えてしまったことによって発症しています。ですから、抗生剤で増えすぎてしまった細菌を一度減らすのと同じように、抗癌剤や手術によって、一度癌細胞の数を減らすことは有益なことが多いのです。ただし、抗癌剤はその作用機序からも副作用が多く、患者さん自身の免疫力も落としてしまいます。これも抗生剤と同じです。そこで、免疫力を生み出すための漢方治療を、副作用予防もかねて西洋医学的治療と併用し、癌細胞を減らすことと免疫力をあげる治療を同時に行うことが最善の治療だと考えています。

 がんの初期および中期の段階で、外科的手術や化学療法(抗癌剤など)・放射線治療を漢方治療や食養生と併用することが多いです。ごく初期や終末期には使用を控えることもありますが、状況を診てはじめの段階で最低限用いることが多い西洋医学的治療法です。副作用との関係を見ながら、医師と対話し、綿密に量や使用頻度を調整していきます。多くの医師は患者さん側からの要求がなければ、マニュアル通りの量と頻度で機械的に行われてしまうことが多いため、積極的に使用量や頻度の相談を早い段階から主治医としてもらいます。また、現代病でもある癌は、保険適応のある昔の生薬以外で有効なもの(霊芝や白花蛇舌草など)も多いので、煎じ薬を用いて治療をします。煎じた上清をバスクリンのように粉にしたエキス剤に比べ、煎じ薬は源泉掛け流しのような強さを持っています。