漢方薬は様々な生薬のバランスを調整して1つの薬になっています。それらの生薬の多くが効果を発揮するのは、胃を通り抜けた小腸(免疫細胞の宝庫)と考えられています。そのため、内服方法としては、食べ物と混ざらない「食間」や「空腹時」に、生薬のバランスを保ったまま小腸に届けることが理想です。口から食べたものは胃の中に二時間程度溜まっているので、「食間」というのは食前2時間と食後2時間の間以外の時間を指します。

 ところが、現代の忙しい生活の中で、毎日それを守るのは難しいかもしれません。そのため基本的には食前の内服とし、「理想は食間だけど、いつ飲んでも飲まないよりは良い」とお考えください。食後や食事中に飲んでも基本的には効きます。忙しい方にオススメの内服方法は、起床時と昼食前、就眠前にすると忘れにくいです。ただし、就眠前は体内に水分がたまるので、あまり多くの水分を取らないでください。また利尿作用の強い漢方薬(五苓散(ごれいさん)系など)の眠前内服で、夜にトイレに起きてしまう場合は、眠前3時間以上前にご内服ください。

 また、漢方薬は内服する種類が増えると、それぞれの漢方薬の効果は落ちてしまいます。そのため、「一回の内服あたり二種類まで」にするのが理想です。屯用で飲む場合には、定期内服の漢方を一度スキップするか、二時間程度空けてくだい。それぞれの内服間隔は2〜3時間程度空けば良いです。

 特に初心者の方は、漢方薬を飲む際に、「苦くてまずいものだ!」と恐れて大量の水を飲みがちです。飲水量を減らすためには、舌の上に粉末を乗せて、唾液で全て濡れるようになるまで味わってください。その状態になれば水はほんの少量で十分になります。

 病院のない野生の動物たちは、自分の味覚と嗅覚で、食べるべき食べものを選び、健康を維持しています。人間も同じで、自分に合っている漢方薬はおいしく感じる方が多いですが、薬効の関係でどうしてもまずいものもあります。漢方診療では患者さんの味覚も、重要な診断要素なので、おいしい・まずいという感想は、医師にもお伝えください。

 最後に内服量に関して、当院では、基本的に1日6袋の処方をし、そこに屯用が加わると、1日10袋程度になることもあります。量が多いと感じるかもしれませんが、それでも本場中国の四分の一程度の量です。日本人の内服量に中国人のベテラン漢方医は驚かれます。

 ただし、これにも個人差があります。飲みすぎると少し気持ち悪くなるなどの症状が出ることもありますので、そういった症状がある場合には無理せずに内服量を減らしていただき、次回診察時に医師にご相談ください。