葛根湯は西暦200年頃に張仲景(チョウチュウケイ)という人が書いた
『傷寒論(しょうかんろん)』という本に掲載されている薬です。
およそ2000年前の薬です。
<ポイント> 辛温解表・発汗・舒筋(じょきん)
① 比較的体力のある人の、かぜの「ひきはじめ」に葛根湯。「汗をかき終わって、寒気がなくなるまで」の薬。寒気がなくなったら45桂枝湯や70香蘇散、9小柴胡湯などに変えましょう。
② 後頸部に帰経するので、後頸部の寒気や肩こりを少しでも感じる時は有効(舒筋)
③ 麻黄湯よりは効果がゆるめなので、寒気を感じたら気軽に服用しても良い。
発汗が終わるまで。長期服用は注意。
*ただし血圧が上昇しやすいので、内服後不快感があるときは使用を控えること
④ 咽頭痛もある場合は、市販薬の銀翹散と併用するのも良い。
<解説>
① 葛根湯は辛温解表薬(しんおんかいひょうやく)で、感冒の中でも「寒邪(かんじゃ)」という寒い性質の邪気が外から入ってしまった時に使います。寒気を感じるということは、体が温めてくれというサインです。具体的には体温を上昇させて、体内にいるウイルスや細菌を殺したいということです。そこで、風邪の初期に内服をして、温かいお風呂に短い時間(体の芯まで温まった感覚なので5分程度)だけ入浴し、吸水力の高い衣服を着て布団の中に頭まで入って汗をダァーッとかきましょう。葛根湯は「寒気があって、汗をかくまで」の薬です。汗をかき終わった感じがしたら「小柴胡湯(ショウサイコトウ)」などに切り替えるのが良いです。入浴に関しては別記しますが、体力消耗の問題があるので、入浴できないほど体力が低下している時は入浴しないでください。葛根湯自体も比較的体力のある人(健康な5歳ぐらい〜60代ぐらい)の方におすすめします。
② 葛根湯の帰経(きけい:生薬にはそれぞれ最終的な効果が集まる場所があると考えられています)は膀胱経という首の後ろを通る経絡です。ですから風邪のウイルスが入ったシグナルとして後頸部の寒気や肩こりを感じたら葛根湯を飲みましょう。早めに対応しておくことで寒邪の侵入を防げます。外出時に少しでも「寒いなぁ」と思ったら気軽に飲んでも良いです。
③ 27番の「麻黄湯(マオウトウ)」は葛根湯と同じ辛温解表薬ですが、とても強いので効果も副作用も強いです。小児の気軽な内服は脱水症状を来たす場合もあるので内服に注意が必要です。成人でも症状がとても強い場合に限り、長くても2日程度の内服にとどめましょう。一方の葛根湯はだいぶ弱めです。1日1回程度なら1、2週間連続の内服はそれほど問題にならないことがほとんどです。ただし、内服しても効果が乏しい、あるいは副作用が出る場合は証(しょう)が違う可能性があるので、内服は控えましょう。
④ 飽食の時代の咽頭痛を伴う感冒には「銀翹散(ギンギョウサン)」が有効です。amazonやマツキヨなどで購入できます。オススメはクラシエの銀翹散です。喉の痛い部分に直接触れると炎症が少し落ち着きます。
*「銀翹散(ギンギョウサン)」別名、天津感冒片(テンシンカンボウヘン)という中国の薬も効果的です。この銀翹散は中国では現在最もよく売れている風邪やアレルギーの薬です。しかし残念なことに「温病学」と呼ばれる飽食の時代の薬なので、日本では保険で認可されていないため、病院では処方出来ません。ただ、日本の薬局でも大体手に入るのでその薬を使ってください。特に寒気のない風邪、舌の先端が紅い人にはよく効きます。それでもノドが痛い場合は、15番「黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)」や50番「荊介連翹湯(ケイガイレンギョウトウ)」を飲むのも効果的です。