花粉症治療のみならず、さまざまな治療のための重要な薬として、自然塩の積極的な摂取を当院では勧めてきました。これまでに1500人程度の方に塩の摂取をおすすめしてきましたが、不思議なほど、悪い報告はほとんどありません。当院ではその実証を得たうえで、受付でも自然塩の販売を開始しました(つゆくさONLINE)。ご来院時に受付でも購入できます。ほぼ原価なので、Amazonより安いです。
自然塩のすすめ
幾多とある食品の中で、「塩」ほどワルモノになっている食材は他にないかもしれません。世の中の医師の多くは、「塩分を控えてください」と声をそろえて言います。ところが、冷静に考えてみると、塩は人間にとって必要不可欠なものであることは科学的にも間違いなく、歴史的にも貴重なものとして扱われてきました。地球の7割を覆う海という自然界の恵みである「塩」が、生物にとって、そんなに悪いことがあるのでしょうか?(なぜ、西洋医学でワルモノになっているかは以前書きました。)
そもそも、陸上生物というものは、海から陸に上がってきた生物です。つまり、海の環境で生きていた細胞が、その環境を陸上でも維持できる機能を獲得した生物が、陸上生物なのです。そして、陸上生物が上陸したころの海は、「発酵した海」でした。その組成は、胎児の羊水と似ていることがわかっています。そのため陸上生物にとって塩と発酵食品は、とても重要な働きをもっているのです。また、海に囲まれた日本は、世界一の塩分摂取量で、世界一の長寿国でした。
塩は東洋医学では、腎を補うものであり、花粉症の病態の中心になっている「熱」と「水」の管理をします。そのため、花粉症の治療には欠かせない漢方薬になるのです。塩の効能はいろいろありますが、一番よく見られる主な効果は、尿量の増加と、足の冷え・夜尿の改善、朝の体調(頭痛・不安・鼻水・動悸・むくみなど)・月経周期の改善です。特に、足が冷える方で低血圧で、朝に弱い方には、「自然塩の摂取」をおすすめしております。
塩が具体的に何をするのか
塩というのは、塩化ナトリウム(NaCl)だけではありません。自然塩には自然界の絶妙なバランスでK,Ca,Mgなどが豊富に含まれています。これらの成分は、「にがり」の成分でもあります。この「にがり」が化学塩(99%NaCl)と、自然塩のもっとも大きな違いであり、利尿作用があることが科学的に証明されています。
自然塩を腎の時間帯である夜間(日没以降)に摂取すると、血管内の血液量が増えます。そのため、足先や手先などの冷えやすい部分にまで、十分な血液量が供給されるために、手足の冷えが改善されていきます。さらに、血液から尿をつくる腎臓への血流も増えるので、尿量が増えます。尿は体内に余分にたまった「水」を排泄しながら、アレルギー(過剰な免疫反応)の原因となる「熱」を体外へ排出してくれるのです。
積極的な自然塩のとりかた
自然塩をとっているはずなのに、まだまだ足が冷えて、水がたまっている患者さんに「塩をとっていますか?」と聞くと、「だいぶ摂ってるんですけどね。食事とかで」と言われる方が多いです。
自然塩の効果は、塩のお湯やスープでの単独摂取でないと、その効果がわかりにくい。というのが一つの特徴です。塩の摂取による効能は、浸透圧によるところが大きいので、3〜6g程度の塩を、好きな量のお湯に溶いて眠前に内服することをおすすめしています。適切な自然塩のバランスが体内に入ると、血圧の低い人は上昇し、高い人は下降することが多いので、当院では低血圧の人だけでなく、高血圧の人にも積極的な自然塩の摂取を推奨しています。(ただし、血圧が高い方には、46七物降下湯や47釣藤散などを処方し、生活指導も行っています。)
自然塩の塩湯を摂ると、平均3日〜1週間程度で冷えや朝の寝起きなどの改善が実感できます。その効果が一番わかりやすいのは、就寝前の内服です。これは、夜が腎の活動時間だからです。特に冬の寒い時期は、足の冷えがとても改善します。夜間にトイレに起きてしまう人も、眠前の塩湯の摂取によって、足の冷えがとれ、膀胱にためられる尿量も増えるために、夜間尿が減る方が多いのです。実際に、朝の尿量が普段の1.2~1.5倍程度に増えていれば、適正な塩の摂取ができていると判断して良いと思います。
*注釈
漢方薬では足の冷えに対して、「附子(ブシ)」という名前の生薬を使いますが、これはトリカブトのことです。猛毒として名高い附子ですが、その侵入を感知した免疫細胞がその危機的な情報に驚くのか、足の血管が開き、足先が温まります。7八味地黄丸や107牛車腎気丸などに含まれています。
牛車腎気丸という薬は、加齢に伴う夜間尿や膝の痛みに用いる漢方薬です。特に冬になると、足の冷える人は夜間尿が増えます。ゆたんぽなどでも改善が見られることがありますが、自然塩の摂取を併用するとより効果的に夜間尿の回数が減って行きます。
自然塩の摂取量
問題の摂取量なのですが、多くの方には小指第一関節程度(3〜5g)、スプーンで小さじ1杯程度をおすすめしていますが、僕自身はそれよりさらに摂ることが多いです。水の量は、自分自身でおいしいと感じる量で良いです。塩湯を飲んで、ノドが乾いてしまう方は、その後に水を追加して飲んでも良いでしょう。大切なことは、塩をある程度の濃度で摂取することです。
これまでつゆくさ医院では、塩の積極的な摂取を1500人以上の患者さんに、おすすめして来ました。塩を飲むということに抵抗感があり飲めない患者さんや、中途半端にしか試せなかった患者さんなども、何人かいらっしゃいましたが、ほとんどの患者さんが効果を感じ、悪い報告がほとんどありません。ぜひ、自然からの恵みである良質な「自然塩」の積極的な摂取を試してみてください。
自然塩の種類について
詳細は後述しますが、自然塩は、原料が日本の海水で、工程に天日・平釜のものを選ぶようにしてください。さまざまな種類の塩がありますが、治療として自然塩を選ぶ場合には、最初の塩として、伊豆の塩である「海の精」をおすすめしています。塩の復興運動から始まっているこの塩は、機械的な不自然な工程が少なく人件費もかかるため、大量生産された塩に比べて、少しお値段はあがりますが、それでも半年たっぷり使っても2000円程度です。漢方薬よりも効果の高い部分があるにも関わらず、漢方薬よりもだいぶ安いです。
また、病院を受診しなくても購入できるため、塩をうまく用いることができるようになれば、漢方薬がなくても、かなりの症状の改善を、塩で得られることができるのです。それに減塩の偽りから抜け出すことができれば、食事もかなり楽しくなります。塩には賞味期限がないので、いくつかの塩を食べ比べると、一層面白くなります。
塩の味比べにおすすめなのは、韓国の国定公園でつくられている焼き塩です。「キパワーソルト」として、日本でも販売されています。この塩は、硫黄の香りがするのですが、からだをアルカリ性に傾けてくれるので、冷えや白砂糖の摂取によって増悪する「瘀血」を改善してくれます。「海の精」と「キパワーソルト」以外のおすすめは、五島列島の「とっぺん塩」、千葉・九十九里の「サンライズソルト」、能登の「わじまの海塩」、八丈島の「ひんぎゃの塩」などなどなどがあります。徐々にコレクションを増やしてみてください。4種類程度の「効き塩」も家族や友人と盛り上がれます!