デルタ株について

 

 ワクチン先進国で猛威をふるっているデルタ株が世界中に浸透してきており、日本でも感染者が増えてきました。だいぶ従来のコロナウイルス感染症とフェーズが変わってきてしまったので、漢方薬の治療なども変化するので、それについてまとめておきます。

 

① なぜ、40代、50代の重症患者さんが増えているのか

② 陰虚火旺による過剰な免疫反応

③ デルタ株にかかったときにどうすれば良いか。

④ デルタ株に対する西洋医学的治療の考え方

 

① なぜ、40代、50代の重症患者さんが増えているのか

 

 まず、10代20代の感染者が増え、40代、50代の重症患者さんが増えています。これまで免疫力の低い70代以上の方の重症化率が高かった状態から、若年層に比率が移行したことの意味とは何か。それは、これまでお伝えしてきたように。東洋医学的な「熱」の問題がより切実になってきたことを意味します。つまり、これまでは「気虚」が大きな問題でしたが、これからは「陰虚火旺」が問題になってきています。

 

 免疫力というものは、強すぎても弱すぎても問題があります。免疫は「自分(自己)」と「自分以外のもの(非自己)」というものを判別し、非自己を攻撃・排除する能力です。免疫が弱すぎると、ウイルスや細菌の感染を許し、がん細胞などの発育を阻害できません。ところが、免疫力が高すぎると、花粉症やコロナウイルスのような弱毒性のものに対し、攻撃をしすぎるアレルギーや、それに引き続くサイトカインストームを引き起こします。

 

 40代、50代という年齢は、更年期障害や、花粉症、高血圧などを患いやすい年齢です。そこには腎の衰えによって、体内の熱を冷やせなくなる。という病態が関与しています。足が冷え、首から上が熱くなるという陰虚火旺という状態が典型的な症状です。更年期障害という病は、30代から「腎」が衰えていくのにも関わらず、若い頃のような「熱」のたまる生活を続けていくことによって、体内の「熱」が冷やせなくなる状態です。

 

② 陰虚火旺による過剰な免疫反応を防ぐ方法

 

 この「熱」の原因は、とくに乳製品をはじめとした動物性タンパク・脂肪の過剰摂取(もともと人類は現代人ほどの肉を食べてきませんでした。糖質制限の生命予後に関しても、動物性タンパクの比重が高いほど、平均寿命が短いことが多くの研究で証明されるようになりました)、精神的なストレス、生理などがあります。一方で、「腎」を弱らせる原因は、加齢、遅い時間の睡眠、自然塩の摂取不足などがあります。

 

 そうした状態があると、とくに肘から手背にかけた蕁麻疹(とくに入浴などで温まることによって症状が増悪するもの)、虫刺されの重症化(中毒疹)、ほてり、高血圧、花粉症で目やノドなどの粘膜面が痒くなる、午後の微熱、夜間尿などの症状が出ます。とくに現代人に特有の遅い時間帯の夕食(本来18時には食べ終わりたいところ)における炭水化物摂取は、「腎」を弱めます。可能であれば1日2食(9時と16時)にして、22時には就寝、5時半に起きる生活を心がけましょう。16時であれば炭水化物の摂取もそれほど大きな問題はありませんが、活動をする9時の朝食時に、エネルギー源である炭水化物を摂るようにしてください。仕事の都合上、夕食が19時以降になってしまう場合は、極力食事をとらずに、自然塩のスープなどで空腹感を落ち着けて、翌朝の食事を楽しみに眠りにつきましょう。

 

③ デルタ株にかかったときにどうすれば良いか。

 

 この状態で、デルタ株にかかると、ウイルスという抗原に対して過剰な免疫反応がひきおこされ、症状が重症化します。このときの初期対応が非常に重要です。これまでお伝えしたように、クラシエの銀翹散を早めに内服することも良いですが、それよりも清熱の治療に特化した「双黄連(そうおうれん)」の使用が重要です。この薬は2020年の初期に、中国科学院が、新型コロナウイルスの治療薬として効果があることを発表して、中国全土で売り切れてしまった漢方薬です。中国では、感染者数の詳細な報告もない状態で、この薬に対する科学的な報告はまだ十分ではありませんが、COVID-19だけでなく、ワクチン摂取後のアレルギー反応などにも効果があります。それは黄色い苔が出た時や、尿の色が濃くなっている状態には、特に効果を示します。

 

 構成生薬は日本でも古くから保険収載されている金銀花・連翹・黄芩という日本でも一般的な生薬です。50番・荊芥連翹湯や80番・柴胡清肝湯にも含まれているものですが、漢方薬は構成生薬の数が多くなると、それぞれの生薬の効果が弱まってしまうので、感冒初期の過剰な発熱に特化した「双黄連」が効果を示します。当院では、今回の事態に応じて、「双黄連」の販売を開始します。自宅の冷蔵庫に5袋程度備えておくことをおすすめしています。また、当院の患者様以外の方にもご購入いただけるように、インターネット販売も10月ぐらいから始める予定ですが、急いでご入用の方は、当院にメール(contac@tsuyukusa.tokyo)にてご連絡ください。

 

 また、感冒予防薬および治療薬として、SARSコロナウイルス感染時に中国で使用され、その効果が世界的にも承認された「玉屏風散(ぎょくへいふうさん)」は、家族内感染も防ぎます。家族内に感冒症状が現れた方がいる場合には、全ての人が1日4回程度内服することで、かなりの予防効果が期待できます。PCR検査はすぐにうける必要はありません。発熱して双黄連を内服しても3日以上の解熱が見られない場合に、近医を受診してください。それ以前に、通常の西洋医学的治療や検査を受ける意味は、有効な治療法もないので、意味がないばかりか、感染を広げたり、受け取ったり、体力と精神を消耗するという害があります。自分は新型コロナに感染しているとの自覚を持って、外出などを自粛し、規則正しい生活を送って自己治癒に専念してください。コロナ陽性と発症とは異なります。

 

 当院でこれまでに玉屏風散を内服されていて、玉屏風散を内服していたことによって家族内感染を防げたという家族および濃厚接触者が、14人の報告を受けています(1500人程度の内服中)。一方で、1日2回の内服をしていたにも関わらず、家族内で感染してしまったという家族が1例報告されているのも事実です。その家族では、1人が肺炎で入院、3人が一日の発熱という結果でしたが、回復されました。

 

 これまで、当院の玉屏風散を1日2回以上のしっかりした内服で発症された方は、上記の家族以外はまだ報告されていません。当院では、玉屏風散の効果に対する調査をこれから開始するので、またご報告させていただきます。こちらの漢方薬も、従来販売されている価格の半額程度で、より多くの皆さまの手に届くように、インターネットも含めた販売の準備をしております。販売開始以前にご入用の方は、当院にメールをいただくか、ネット上で玉屏風散をご購入ください。価格の相場は30日分で1万円前後です。

 

https://search.rakuten.co.jp/search/mall/%E7%8E%89%E5%B1%8F%E9%A2%A8%E6%95%A3/

 当院のインターネット販売では、30日分で4500円での販売を予定しておりますが、診察が必要になりますので、その体制の準備に現在お時間をいただいております。9月中旬〜10月には販売を開始できる予定です。

 

 またコタロー製薬さんとの違いは、玉屏風散という名前からもわかる通り、本来「散剤」というものは、生薬を粉状にしたものが正しいものです。コタロー製薬さんのものは、ツムラのエキス製剤と同様、生薬の抽出液によるものなので、当院の粉状のもの(生薬そのものを粉にしたもの)とは効果が異なります。当院では、双方を試した結果、やはり散剤のほうが効果が高いということで、散剤での処方を行っております。

 

④ デルタ株に対する西洋医学的治療の考え方

 

 まず、これまでにも書いてきましたが、PCR検査を受けることに対しては、あまり意味がないことだとお考えください。発症もしていないのに検査を受けることは、害こそあれ、メリットはほとんどないと考え、コロナ陽性者との濃厚接触や、家族内で感冒症状がある方がいた場合には、自分自身の行動を自粛し、感冒症状があるときには仕事を休み、外出時にはマスクを着用、手洗いを徹底するように心がけてください。それはコロナに限ったことではなく、あらゆる感冒にかかった可能性があるときの、当然の常識的な対応です。

 

 3日以上経過しても感冒症状の改善が見られない時には、近医を受診しましょう。そこで、新型コロナ陽性となると、以下のような症状を抑えるだけの「対症療法薬」が処方されます。それらの西洋薬、および西洋医が舌診・脈診などもしないままに処方する画一的な漢方薬の治療についての注意点をあげます。一番大切な原則は、西洋薬にはウイルス感染に有効な治療薬や予防薬は「ほとんどない」という正しい認識です。世界シェアの8割を日本が占めているタミフルなどは、ハッカク(大茴香)の成分を化学合成したもので、ウイルス自体の殺傷能力はなく、細胞内に封じ込めるだけの薬なので、世界的には特別な事情がなければ使われない程度の薬です。

 

<参考>

 インフルエンザについて

 新興感染症こそ漢方治療

 自然免疫と獲得免疫について

 

 ポイントは、西洋薬は薬が症状を抑えるのに対し、漢方薬は漢方薬によって動かされる自分自身の免疫細胞が治す、つまり自分の力で治すということです。西洋薬と漢方薬のちがいについて

 

(i) カロナール、アセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬

 

 まず、発熱という生体反応は、ウイルスが引き起こしているものではなく、ウイルスを倒すために、人間の中の免疫細胞たちが、精一杯頑張って出しているものだということを忘れないでください。最初の3日間の発熱は、不用意に下げてはいけません。インフルエンザでは、その重症化や脳症に関与する別の解熱鎮痛薬であるロキソニンなどのアセチルサリチル酸の使用が禁忌とされていますが、カロナールにしても、その使用は3日目以降に発熱の影響が強すぎる段階になってからの使用を心がけましょう。また、解熱剤としては、生体全体の免疫システムを整える「双黄連」のほうが、抗ウイルス作用を兼ねた優れた解熱剤なので、そちらを最初の三日間は使用してください。

 

(ii) メジコンなどの鎮咳薬

 

 発熱同様、咳も有害なウイルスを体外に排出するための重要な生体反応です。これを止めることも初期治療としては、重症化を助長する可能性があるので、極力使用を控えましょう。漢方薬の95番五虎湯や55番麻杏甘石湯、玉屏風散などを積極的に使いましょう。病院に診察を受けるときや、漢方薬を用いても咳が止まらず眠れない時などの一時的な治療に用いてください。通常は漢方薬のほうが効果が高いので、使用する必要はありません。

 

(iii) アレジオンなどの免疫抑制薬

 

 これも必要な免疫反応を抑えこんで症状を消す「対症療法」の代表例です。とくに感染初期の免疫反応が重要なときには用いてはなりません。免疫反応が明らかに過剰であるときにのみ一時的に用います。一般の方がそれを判断するのは難しいことですが、三日目以降も症状が重いときには、一時的に使用してみても構いませんが、免疫を抑制する薬だということは忘れないでください。この薬の代替薬としても双黄連は、生体のシステムを利用した過剰免疫の抑制ができます。

 

(iv) 麻黄湯(まおうとう)葛根湯(かっこんとう)

 

 舌診や脈診を行わない西洋医の処方には気をつけてください。たまに1日3回7日分という量を処方している医師を見かけますが、それはあきらかに過剰です。麻黄湯や葛根湯は、熱の発散や発汗促進などに効果を示し、感冒初期の悪寒のある風邪には非常に有効ですが、感冒がながびいたときの発熱には、逆に津液と呼ばれる体内の水分などを失ってしまうので、逆効果になります。ながく使ったとしても、悪寒のある3日程度に抑えてください。

 

(v) 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

 

 別名「医王湯(いおうとう)」とも呼ばれる補中益気湯は、気力をあげる反面、熱を助長してしまうこともあるので、陰虚火旺の方には用いてはならない漢方薬です。とくに、発熱初期の免疫反応を過剰に活性化してしまう可能性があるので、その使用を注意しなければならない代表的な薬剤です。

 

 これまでの新型コロナウイルス感染症は、高齢者が重症化する「気虚」の存在が主体に治療されていたので、補中益気湯も効果がありましたが、デルタ株に関しては、「熱」が問題になっているので、発熱初期から解熱するまでの補中益気湯の摂取は控えてください。解熱したあとも、倦怠感が残っているなど「気虚」の状態が前面に出てきた際に、内服を開始してください。