花粉症という病、特にスギ・ヒノキに対する花粉症は日本社会が作り出した病とも言われています。

 1958年から日本の森林生産力を40年間で2倍にするために、成長の遅い広葉樹を伐採し、杉や檜といった針葉樹を植林するという「国有林生産力増強計画」という国策が行われました。しかし、そこまでして増殖された日本の木材は、現在ほとんど使われずに放置されています。杉は植林後30年して花粉を飛ばすようになるので、この公害の影響は1998年から30年後の2028年までは増加の一途をたどると考えられています。花粉症という病は、人類の無思慮な自然破壊によって引き起こされた現代病なのです。

 この花粉症は、花粉などの物質に対して、過剰に反応してしまう免疫反応によって引き起こされるため、西洋医学では、抗ヒスタミン薬などのアレルギー薬や、ひどい時はステロイド剤を用いて、免疫を無理矢理抑制して、とりあえず症状を抑えるという「対症療法」が行われます。

 しかし、この抗ヒスタミン薬は小腸にある樹状細胞という免疫の要の細胞に対しても作用するので、長期的な連用によって、小腸の機能が低下し東洋医学的な「気虚」の状態を招きます。このことはまだ科学的には明らかに出来ていませんが、臨床上多くの患者さんが気虚の状態に陥って、何らかの症状(全身倦怠感や眠気、口渇、めまいなど)を生じています。科学はまだまだ小腸の解明には至っていないので、今後科学的に明らかにされていくでしょう。

 東洋医学では、花粉症などの慢性的なアレルギーの原因として瘀血や気虚、水毒、肺熱などの治療をします。瘀血の治療は時間がかかるものが多いですが、大体1年ぐらい治療をすると抗アレルギー薬などの西洋薬を使わなくても大丈夫になります。

 基本的な花粉症治療は、アレルギーの根本治療とは別に、漢方薬の頓用と、それでも症状のひどい時だけ西洋薬を用いるという治療をします。具体的には下記の3つの漢方薬を症状に合わせて使い分け、西洋薬を頓服として用います。

①    鼻水(水毒)…19小青竜湯

②    鼻づまり(肺熱)…104辛夷清肺湯

③    目の痒み(肺熱)…50荊介連翹湯

 少しでも症状があれば早めにこれらの薬を積極的に摂ることで症状の悪化が防がれます。また、症状がひどい時にはこの3種類を一日3、4回内服してください。

 それでも症状がひどい場合には、抗ヒスタミン薬(アレグラなど)と言われるような薬を内服します。これらの薬は、一日1、2回の内服が一般的とされていますが、漢方薬を併用していると、一回の内服で、2、3日もつようになります。それが、体質改善と共に、1週間、2週間と使用間隔が伸びて行き、西洋薬を飲まないで済むようになり、最終的には漢方薬もほとんど必要がなくなってきます。

 また、目の痒みに関しては、目をかくことによって、粘膜に傷が付いてしまうと悪化してしまうので、早めにこまめに点眼薬を使ってください。

 食事に関しては、甘いものや化学物質などの瘀血を進行させる食べ物をなるべく摂らないようにしていただき、牛乳などのアレルギーを惹起するものは極力とらないように心がけてください。鼻水が出るタイプの花粉症の方は水毒があるので、水分の摂り過ぎや、味の濃いもの、就寝2時間前の飲食を極力避けるようにしてください。