この数ヶ月、1日50人程度の患者さんと、毎日のようにコロナについて話を続けてきました。そこで感じたことは、この社会変化を受けて、健康になる方と不健康になる方の差がとても大きいということです。

 人類に限らずあらゆる生物と自然界との間には、ある一定のバランスが保たれるようなシステムがあります。そのバランスは常に揺れ動いていて「動的平衡」とも呼ばれます。これは、東洋思想の陰陽の法則にも通ずるもので、人間の健康が、お湯に浮かぶ茶柱のように揺れ動いている。というのと同じことです。

 ウイルスや細菌の発生は、自然界のバランスを取り戻すシステムとして、世界中で常に起こっています。ウイルスや宇宙線をはじめとした放射能は、地球上の生物の設計図である遺伝子に変化を与え、進化の原動力となってきました。世の中は常に揺れ動いていて、その時その環境に適した生物が生き残り、適さない生物が滅びていく「自然淘汰」というシステムが働いています。今を生きている私たちからすると、とても恐ろしく怖いことですが、残念ながらこの世の中はそのようにできてしまっているのです。

 けれど、それをどんなに恐れても、自然界の壮大なシステムを変えることはできません。それよりもむしろ、自然界のシステムに適応して生き延びていくためには、一人一人がどのように生きていけば良いのか。ということを考えることが、今回の感染症から人類が学ぶべき最重要課題なのだと僕は考えています。

 今回の新型コロナの到来は、自然の摂理からはみだし過ぎた人間社会の歪みを、次々に顕在化させています。例えば、移動しすぎ、密集しすぎる現代社会。数週間工場をとめただけで透き通る空、いまや何万人もが罹患している花粉症の軽症化、異常としか思えなかった満員の通勤電車の解消、化学的な対症療法がもたらす易感染性・重症化の解明など、これまでの人類の科学に対する過信が修正された例は、枚挙にいとまがありません。そうした変革の中、従来の考え方や生き方のままでいる企業や人間は、残念ながら自然淘汰を受けることになってしまうでしょう。

 こんなことを言うとひどいようですが、それは自然界のシステムなので仕方のないことです。ただし、具体的な数字を出すのは難しいことですが、COVID-19によって亡くなられた方の数と、SARS-CoV-2の到来によって救われた人の実際の数はどちらが多いのかはわかりません。豊かに見えていた日本社会の中ですら、1日に100人近くの方が自殺し、50人近くが交通事故で亡くなっている状況があります。グローバリゼーションや大気汚染、密集しすぎた社会からの解放でより多くの方が人間本来の生き方を取り戻すことを僕は願っています。

 話をもとに戻します。

 大きな構造で通用する法則は、小さな構造の中でも通用します。

 誤解を恐れずに要約すると、新型コロナウイルスは、自然の摂理から逸脱しすぎた人類の「動的平衡」を修正する役割を持っている。ということです。そして、その変化に適応しない人は、残念ながら自然淘汰を受けてしまう。

 冒頭にお話した、健康になる方と不健康になる方の二極化はずばり、自然法則に適応しているかしていないか。の差です。それは「入眠時間」と「食」の変化に、もっとも顕著に現れています。

 人間の健康は、「食う寝る(食事と睡眠)」にかかっています。もちろん人間関係や天候・経済などの環境も関係するのですが、それらはほとんどの場合、自分でコントロールすることができないので、自分の不調の原因をそこに見つけてもそれを思い通りに修正することはできません。自分の健康を取り戻すためには、自分の「食う寝る」を調整すること、自然のリズムに合わせることがとても大切になってきます。

 ところが、これまでの世の中では、中学生の塾の帰りが午後10時だったり、残業が当たり前だったり、さらにストレス発散とそのあとに終電まで飲み歩いていたりと、現代人の生活は、極端に遅くなっていました。

 ちなみに、高齢出産の傾向が高まり、30代後半での出産をすると、子供の中学・高校・大学の受験のころ、母親はちょうど更年期を迎えます。更年期障害は腎虚によるものなので、22時前の睡眠が重要になってきます。その時期に子供の受験で睡眠が遅くなり、更年期障害が悪化して家庭内不和が激化して受験もうまくいかない。ということがとてもよくある話です。

 現代人の生活時間は、太陽と月という自然界のリズムに対して極端に遅くなっていました。いま、学校の休校や在宅勤務が進み、生活時間の自由度が高まった中、自然のリズムに合わせた生活をできている人は、心身ともにとても健康な状態を取り戻している方が本当に多いのです。

 それを踏まえて、つゆくさ医院で推奨している生活リズムは、

 17:00 夕食(飲酒する人は16:00から)

 21:30 就寝(子どもは20:00~21:00)

 5:00  起床(長く寝たければ6:30起床)

 というものです。「えーっ!」と思う方もいるかもしれませんが、電気のない時代の生活、つまり自然界のリズムで生活せざるを得なかった時代の生活はもっと早いでしょう。それに大切なことは、別に時間を損している訳ではないということです。「長く寝る」のではなく「早く寝ている」だけです。これからの時代、こうした生活リズムが人類のスタンダードになってくることを僕は願っています。

 また、学校の休校と夫の在宅で湧き出したお母さんたちからの不満は「食事が大変」というものです。ここも発想を変えて、「人が増えて食事をつくるのが大変ならば、増えた人たちが食事をつくる回数を増やせば良い」と考えてください。本来食事をつくることはとても楽しいものです。それがつまらなくなるのは、時間に追われて料理をしていたからです。子どもに料理を手伝わせると時間がかかってイライラしてしまう。というお母さんも多かったのではないでしょうか?ところが今の子どもたちには、ありあまる時間があります。You Tubeを見ているよりは、よっぽど有意義で楽しい時間になるでしょう。宿題がたまっている子もいるかもしれませんが、僕は宿題より料理の体験のほうが、子どもたちの人生にとってよっぽど大切だと思っています。もっといえば、宿題は古いシステムから引き継がれた慣習なので、今後そういったものはなくなっていくと僕は考えています。(それはまたの機会に書きますが、これからは、子どもたちにとって義務であった教育から権利の教育に移行してくるでしょう。)

 また、ライフスタイルにもよりますが、家族で在宅のときには、無理をして3食にする必要はありません。もともと人類は2食だったという説もあります。朝5時に起きて、仕事を済ませてから9時頃にゆったりとブランチをして、16時ころになったらお腹を空かせながらゆっくり料理をする。というのも良いでしょう。

 現代生活はあまりにも忙しくなりすぎていました。忙しくなって時間がなくなると、現代人は食事と睡眠の時間を削ってしまっていたのです。それは、人間が料理をしなくなる、つまりその時のその土地に生まれてくる植物を食べられなくなる。という自然の摂理からずれた行為につながるのです。その時のその土地に生まれてくる植物はその時のその土地に生きている生きもののために育ちます。新型コロナウイルスの到来は、とても怖いものですが、その一方で、自分自身や社会が、自然のリズムとどうずれていたのか。ということを再認識する良い機会だと考えてみてください。そうすれば、コロナ離婚も減ってきます。

 世の中のシステムが大きな変革を迫られている中、今後どう生きるのかを適切に考えるためには、今の自分自身が自然のリズムに合わせた生活をしてみて考えるのが一番です。いろいろなことが大きく変わっていきます。元にもどっていく部分もあると思いますが、こうした新時代の黎明期にこそ、自分の生活リズムを変えてみてください。

 

注)SARS-CoV-2はウイルス名、COVID-19は病名です。SARS-CoV-2によってCOVID-19になる。白砂糖で生理痛になる。みたいなものです。