高脂血症薬という不自然

 日本人が一番消費している西洋薬は高脂血症薬です。LDL(悪玉コレステロール)やHDL(善玉コレステロール)の検査値が高くなる病とされていますが、実は科学的にそのコレステロールが人体の中で何をしているのか。ということは、まだあまりよくわかっていません(だから基準値を下げれば下げるほど薬が売れるようになるのです)。とりあえず、コレステロールが高ければ、脂が血管について動脈硬化が早まり、心筋梗塞や脳梗塞が怒る可能性がほんのちょっと上がるから、死ぬまで一生飲んでおきましょう!という薬です。でも実際には、70歳以上になるとコレステロールの高い人のほうが寿命が長いとか、いろいろな見解があるのも確かです。アメリカではLDLの正常値が190なのに、日本では140まで引き下げられ、その間の数値で高脂血症薬を飲まされ続けている人が無数にいるので、日本で一番売れている訳のわからない薬になってしまっています。以前も書きましたが、当院ではLDL190になる前は、夕食の糖質制限や117茵蔯五苓散の内服で改善するので、実際のところ、高脂血症薬を使うことになる方は現状ではいません。(不安だから飲んでおくという患者さんはいらっしゃいます。おすすめはしてないのですが)

検査と治療について「高脂血症薬」

 

未知なる脂質

 脂質というものは、わたしたちの細胞の細胞膜(脂質二重膜)をつくっているものでもあり、三大栄養素(ブドウ糖・アミノ酸・脂肪酸)のひとつと言われているものです。ところが、エネルギーとなるブドウ糖、からだをつくるアミノ酸という物質に比べて、脂質の役割や動向というのは、いまいち何をやってるのかわからない。というのが、高校時代に生物を習っているときからの悩みでした。のちに脂質は漢方薬や香りの主要成分でもあり、外界からの「情報」の役割をしている。ということを、日本医科大学の高橋秀実教授から聞いて衝撃を覚えました。漢方の煎じ薬は、葉や根などの生薬を煮詰めることで、上澄みの液体に脂質が溶け出し、それを内服するものです。ツムラなどのエキス製剤は、その上澄み液を粉にしたバスクリンみたいなものです。つまりツムラ製薬という会社は「バスクリンとエキス製剤」という共通の技術を開拓した会社なのです。

 「悪玉コレステロール」という言葉がありますが、実は「善玉コレステロール」と同じものです。中身のコレステロールは同じなのですが、その輸送タンパク(コレステロールを運ぶトラックのようなもの)が違うだけなのです。高脂血症薬というのは、さまざまな種類がありますが、基本的にはこのサイクルを止めたり、吸収されるものを吸収させなかったりと、人間の自然なサイクルを妨害して、とりあえず検査数値を正常化しているだけで、脂質の流れが滞ってしまっている問題に関しては、根本的な治療をしていないのです。血管障害をほんの少しだけ改善するエビデンスが出されているのですが、所詮エビデンスなんて、どうにでも作り出せるものなので、隠れた副作用が背景にある可能性は否めません。少なくとも、七十歳以上は逆のエビデンスも出ているのです。が、そんなことを広めようとする人は、そんなに多くないのです。

まとめ

 何はともあれ、西洋医学はその場しのぎの対症療法で優れた効果を示す医学です。長く飲み続けなければならない薬は、大抵隠された長期的な副作用があって、別の病をつくりだします。それは、莫大な研究費用をかけなければ証明できるものではないので僕にはできないのですが、自然の摂理や流れからの乱れが病を生み出す。という原則から、僕は患者さんに長期的な内服の西洋薬を勧めることはあまりありません。そんな訳のわからないものを飲み続けるぐらいなら、その前にやってみるべき食養生がたくさんあるのです。高脂血症を指摘されたら、まずは夕食の糖質制限、できれb食事を、夕食抜きの一日二食にしてみてください。